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ブレッドボードI/Oプログラミング連載第1回 初稿届く

先週、印刷会社さんよりブレッドボードI/Oプログラミング連載第1回の初稿が届きました。レイアウトは最終的に、1段と2段組の混成となっています。文章を読む際は、確かに2段組の方が読みやすいのですが、プログラムリストや実行例が登場するパートにおいては、2段組は逆に読みにくくなってしまうため、適宜使い分けをしています。

総ページ数は、現時点でなんと104頁。連載のボリュームではないですね。しかし、"基本を理解する"ためには、いずれも外すことはできない重要な情報ばかりなので、この内容で皆さんにお届けします。

初稿が届いた夜は、行きつけの珈琲専門店で早速校正に臨みました。静かなお店の中で、挽き立ての豆、淹れ立てのおいしい珈琲を頂きながらの校正に勝る一時はないでしょう。

 

posted by Wataru Nishida.
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データシートを読む

ブレッドボードI/Oプログラミングは、プロセッサと外部環境をつなぐ"基本インターフェース"を原理から学び、自分自身の手で"デバイスと会話する"ことを目指しています。このためには、各種インターフェースのプロトコル資料を読み込むことはもちろん、それぞれのデバイスのデータシートを精読できる力を持たなければなりません。

従来のテキストでは、あらかじめライブラリ関数を用意し、読者は出来合いの環境でプログラミングすることが多かったように思います。しかし、これでは単なる手順の繰り返しに過ぎず、"体得する"レベルに到達することは、ほぼ不可能でしょう。私は、自身の数え切れないほどの失敗から、この教訓を学びました。

書店にずらりと並んでいる入門書は確かに優しく、魅力的な顔をしていますが、果たしてこれらを百冊読んだところで、読者は得心できるのか?私はできませんでした。

雛鳥は、暖かな巣の中でひたすら口を開け、親鳥からの餌を待ち、いつの日か巣立ちます。翻って、これまで市販されてきた技術書の中で、読者に巣立ちを迎えさせてあげることができた本は、何冊あったのでしょうか?なぜ、自分は巣立つことができなかったのか?どうすれば、巣立つことができるのか?私は20年の間、自問自答を続けました。答えはまだ見つかりませんが、現時点で私が考え得る、最良の道のひとつがブレッドボードI/Oプログラミングです。

本連載では、デバイスとの会話のために、USB-FIFOを用います。吟味を重ねた結果、今回はUSB-FIFO機能を実現するICとして、Future Technology Devices International Ltd. (FTDI社)が提供している、FT2232Hを選択しました。

デバイスと会話する前段階として、まず私達はFT2232Hを制御する必要があります。このために、FTDI社はD2XXドライバを用意しています。D2XXドライバはバイナリー配布のみでソースは非公開ですが、Windows, Linux, Mac OS X用のドライバが用意されており、比較的簡単にFT2232H制御プログラムを書くことができます。

また、FT2232HにはMulti-Protocol Synchronous Serial Engine (MPSSE)と呼ばれる、高機能エンジンが組み込まれており、ホスト側の処理機能に依存しない、極めて高度なタイミング処理が可能になっています。MPSSE機能を活用すれば、インターフェースプロトコルの理想値に近いスピードで、通信することが可能になります。

このFT2232Hが持つ潜在的な力を引き出すためには、下記の3つの資料を読みこなす必要があります。

本連載は、読者の方々にこれらの資料を実際に読んで頂くことから始まります。英語に抵抗がある方、難解なデータシートに拒否反応が出てしまう方、様々だと思いますが、心配ありません。私自身がそうでした。

幸い、技術英語ほど明快なものはありません。高校英語の素養があれば、十分に理解することができます。そして、最初は苦しくとも、ひとつのデバイスをとことん理解することが出来れば、まるで登山のように視界は一気に開けます。

繰り返しますが、"手順の疑似体験"では、決して視界が開けることはありません。自分の足で登り切って、初めて見えてくるものがあるのです。データシートはそのための地図であり、ブレッドボードI/Oプログラミングは羅針盤なのです。

posted by Wataru Nishida.
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待ち遠しさをもう一度

今回、書籍ではなくオンラインPDF連載という形で発表を決意した背景には、いくつか理由がありますが、そのうちのひとつを漫画家の浦沢直樹さんが、代弁してくださっていましたのでご紹介します。ソースは2008年7月、手塚治虫生誕80周年を記念して、日本映画専門チャンネルで放映された"浦沢直樹インタビュー"です。

浦沢直樹氏インタビュー

偶然見ていたインタビューの後半、「人を面白がらせる」というパートが登場しました。

やっぱり、人を面白がらせることは、これはねぇ、凄い偉大な作業だと思うんですよ。

人を面白がらせるって。

例えば、僕ら、週刊誌で書いてた時に、"来週が楽しみ"って気持ちにさせるっていう。

それ考えただけで、なんか、なんだろう、胸が一杯になりますよね。

僕が書いたもので、”来週が楽しみ"っていう人が世の中に何人も出来るっていう。

だから、それこそ、"宮崎駿の映画がそろそろ公開される、なんかワクワクするね"って感じ。

これは、凄い重要なことのような気がする。

待ち遠しい、ワクワクする。 そういうものを作りたい・・ですよね。

"次の発売日が待ち遠しい"、"新着の雑誌を開く時、ワクワクする"。

私自身も含め、かってはこのような気持ちを抱いていた読者が、全国にいたはずですが、今はどうでしょうか。あの目をキラキラさせていた少年達は、どこに行ってしまったのでしょうか?

「Computer Architecture Seriesの連載が待ち遠しい」読者の方々から、心底そのように言って頂ける連載作品を目指して、準備を進めています。

posted by Wataru Nishida.
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Wataru's memo 再開

Wataru's memoは、著者である西田 亙による四方山(よもやま)話です。これまでは別サイトで提供してきましたが、オーバーシー・パブリッシングの刷新を機会に、今後はこちらのページから発信します。

出版や執筆にまつわる話から、書評、エッセイ、健康講話など、様々な視点からお届けする予定です。

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