必要機材
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半田ごてと半田

電子工作にあたり、半田ごてと半田は必須のツールです。生涯の友とするにふさわしい半田製品をご紹介しましょう。

半田ごて

私は、若い頃から"安物の半田ごてを買っては、コテ先をだめにして買い直す"ということを繰り返していました。半田づけも、イモハンダばかりで、ほとほと自分には半田のセンスがないのだと諦めていたある日、エディスンインターナショナルという半田ごて専門メーカーのホームページに辿り着きました。今を遡ること8年前、2005年7月のことです。

ホームページからは、社長さんの半田づけにかける情熱がひしひしと伝わってきましたので、即メール。すると、社長である江藤さんから、即返信。

小生、現在は半田こての製造・販売を営んでおりますが、30歳の時に独立し、家電メーカーの下請けとして25年間、朝から晩遅くまで半田こてを持ち、作業をしてきました。その集大成がEH−520です。

ご厚意で1セットを送って頂くことになりました。

届いたEH-520を見てびっくり、こて先が黒く軽い(2.9g)!もちろん、こて先の先端には綺麗な銀色の半田メッキが施されています。搭載されている大容量セラミックヒーターは、通常は約20Wで安定していますが、最大入力200Wの性能を持っているため、コンセントを差し込んだ瞬間、あっという間にコテ先の温度が上昇します。当然、半田づけを行う際の熱復帰スピードも抜群ですから、「もたもたしている間にこて先温度が下がって、さらに泥沼に陥る・・」という失敗がありません。

また、半田メッキが施されたこて先は、惚れ惚れするほどの美しさで、溶けていく半田が愛おしく思えてくるほどです。それまでは、こて先を頻回にスポンジでクリーニングする習慣はなかったのですが、"美しいこて先を汚してはならぬ"と、まめに半田を拭き取るようになったのは、自分でも驚きでした。丁寧に清掃された道ばたにゴミが落ちていると、拾いたくなる心境と同じですね。

このクリーニングの際に威力を発揮するのが、EH-520専用スタンド。スポンジに、穴が8つ開けられている点にご注目ください。何気ない工夫なのですが、この穴ポコのおかげで、こて先は常にピッカピカに保たれるのです。

さらに驚いたのは、2面メッキ仕様の特注こて先チップです(製品添付品は全周型チップ)。従来のこて先チップは、全周性に半田メッキが施されているため、半田が重力で背面に流れ込み、基板を汚したり、ブリッジを作ってしまうことがありました。しかし、半田メッキを前面と先端部の2面に限定することで、このような問題を防ぐことができるのです。実際、この2面メッキチップを使うと、もはや全周メッキタイプには戻れません。

チップ全体が黒く見えているのは、硬質クロムと黒色クロムの二重層からなるクロームメッキです。黒クロームメッキを施すことにより、半田のにじみ上がりを防ぎ、半田量を一定に保てるのだそうです。写真はこの8年間使いこんだ2面メッキ特殊チップですが、驚くほどの耐久性です(上段が前面、下段が背面)。

残念ながら、エディスンインターナショナルはその後廃業されましたが、現在はデンオン機器株式会社からSS-8200として製造販売されています。確認してみると、元々EH-520は同社のOEM製品として納入されていたそうです。その後、私はロジックデバイス社から、こて先などの消耗品を購入しています(秋葉原で探したこともありますが、ほとんどのお店には置いてありません)。値段もこちらのお店が一番安いようですし、対応もとても親切でした。

半田

良い半田ごてが揃えば、次はいよいよ肝心の半田ですが、私のお勧めはKester社の共晶半田です。

共晶半田の成分は、Sn 63%/Pb 37%であり、最も融点が低く、温度低下時の液相から固相への変化が瞬時であるという特徴を備えています。要するに、「溶けやすく固まりやすい」のです。実際、共晶半田を使うと自分の技術が向上したかのような、錯覚を覚えます。

国内でも共晶半田は売られていますが、店先に並んでいるものは少量タイプであり、割高です。色々調べたところ、世界的な半田メーカーであるKester社の製品の評判が良かったので、海外から取り寄せてみました。リール1ポンド(454g)単位で販売されていますが、場合によっては一生使えることを考えれば、安い買い物だと思います(6000円前後)。Kester社の共晶半田は、伸びが良い(濡れが良い)こともさることながら、香りがたまりません・・。この香りを嗅ぐために、半田を溶かしてしまうほどですから、困ったもの。

"Kester"と共晶半田を意味するコード"24-6337"で検索をかければ、様々な太さの製品がヒットしますので、望みのタイプを探してみてください。ちなみに、上記の写真は、0.05inch、1.27mm版です(品番 24-6337-0053)。標準的な、100mil (2.54mm間隔)の基板で作業するなら、1.27mmの太さが良いかもしれません。

ハンダテラピー

信頼できる半田ごてと、香りの良い半田を手にして、秋の夜長の"ハンダテラピー"を楽しみましょう。ハンダテラピーとは、電子工作の人気ブログ"陰気な男でいいですか?"の著者、いしかわさん発案の言葉です(2004年に誕生?)。

posted by Wataru Nishida.